社内共有資料

防衛の超新星「アンドゥリル」を支える日本のモノづくり
暗黙知がフィジカルAI時代を制す——日本逆転のカギは「ハード」にある

TBS CROSS DIG with Bloomberg「1on1 Tech」より、コーラルキャピタル ジェームス・ライニー氏が語る、防衛テックの台頭と日本の製造業の可能性を整理
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まず3行まとめ

ご注意:本資料は公開されている対談番組を社内共有用に要約したものです。企業の評価額・調達額などの数値は動画で紹介された時点のものであり、最新の公表値と異なる場合があります。防衛・安全保障に関する見解は出演者・番組のものです。正確な情報は一次情報でご確認ください。
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元動画

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登場人物・番組

ゲスト

ジェームス・ライニー氏(コーラルキャピタル)

  • ベンチャーキャピタル、コーラルキャピタルの創業パートナー/CEO。米国籍だが人生で最も長く日本に住み、自身以外のメンバーは全員日本人
  • 防衛特化ではなくソフトウェアから核融合まで幅広く投資。ミッションは「日本の次の時代を作る会社を支援すること」
  • 米アンドゥリルに日本のVCとしていち早く出資。京都フュージョニアリング(核融合)などハードテックにも早くから投資
番組

TBS CROSS DIG with Bloomberg「1on1 Tech」

  • テクノロジーとビジネスの対談番組。今回のテーマは防衛テックと日本のモノづくり
  • 3部構成:①防衛テックの本質とアンドゥリル ②影の主役・日本の製造業 ③AI時代のメイド・イン・ジャパン
  • 専門的な内容のため、要所は英語で解説(本記事では日本語に要約)
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数字で見る「アンドゥリル」

10兆円
アンドゥリルの評価額
動画紹介時点の水準。OpenAI・アンソロピックの次に注目される、防衛スタートアップの新巨頭
50億ドル
2026年の調達額(約8,000億円)
スペースXを思わせる後期ラウンド規模。防衛テックにマネーが殺到していることの象徴
200社に1
引き合いから投資に至る狭き門
日本のサプライチェーンを求めて米企業から連絡が殺到するが、実際に投資へ進むのは100〜200社に1社ほど
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なぜ今、防衛テックなのか——bits と atoms

背景にあるのは「パックス・アメリカーナ(米国による平和)の終焉」。第2次大戦後、米国は経済力と産業力で世界に安全保障の傘を提供してきましたが、その一国依存が続かなくなり、各国が自らの安全保障に貢献する必要が出てきました。

ここで効くのがbits(ビット=ソフトウェア)と atoms(アトム=ハードウェア・製造)の対比です。米国はソフトウェアで大きく先行する一方、過去数十年で製造(atoms)を中国などにアウトソースしてきた。だから同盟国の製造力が重要になります。日本は米国にとって最大級の同盟国(最大の対米投資国であり、製造業では最大級の外資系雇用主、米軍基地数も世界最多)で、地政学的にも緊張地域に近い。日本には米国の安全保障、そして自国の安全保障に貢献する大きな機会がある——これが防衛テックが注目される理由です。

技術の変化も後押しします。かつては数千億円の戦闘機プログラムを作れるかが勝負でしたが、今は戦場の認知・連携をつかさどるソフトウェアの層が重要になり、海・地上・空の安価なドローン群を大量に運用する時代へ。ここで日本の高精度・高品質な製造が生きてきます。

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アンドゥリルとは——従来の防衛企業と何が違うのか

従来のレガシー防衛企業
政府と契約し、コスト超過は顧客(政府)に請求。R&Dのリスクを取らない
政府と
大型契約
コスト超過は
政府に請求
R&Dリスクを
取らず
コスト高止まり

アンドゥリル型
自社のバランスシートでR&Dに投資し、自らリスクを取る
ソフトウェアに
コミット
自社BSで
R&D投資
VC調達で
リスクを取る
コスト削減の
インセンティブが
働く

創業はOculusのパルマー・ラッキーとファウンダーズファンドのトレイ・スティーブンス。ピーター・ティールが創業したファウンダーズファンドが最初に出資しインキュベートしました。同ファンドと同じく指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)に由来する名を持つのが、データ解析のパランティア。アンドゥリルが創業期から日本の製造基盤(アクチュエーター等の部品)を使ってきた点が、日本にとって重要です。

コーラルが出資した決め手は、多くの海外VCが「日本の防衛予算増の波に乗りたい」と考える中で、アンドゥリルは日本にいる目的だけでなく「日本と一緒に作る・製造する」ことにコミットしている点。日本に製造基盤を築き、日本の防衛業界にコミットする——ここが根本的に違う、と評価しています。報道では、日産の追浜工場を取得してドローン生産拠点にする計画も伝えられ、100%日本製部品のドローン試作品も披露されています。

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抑止力のリアル——嫌だけど、必要か

軍事化の広がりをどう捉えている?
ライニー氏は「世界的な防衛費の増加には非常に複雑な思いがある」と率直に語ります。多くの国が軍備に投資し、軍事化が常態化していくのは不快なこと。ただし同時に、平和には強さ(抑止力)が必要だとも考えている、と。矛盾を抱えたうえでの姿勢です。
日本はどう構えるべき?
キーワードは「ポーキュパイン(ヤマアラシ)戦略」。誰も攻めたくない・つけ込めないほど強く見せることで、攻撃を思いとどまらせる考え方です。複雑な地域に位置する日本には、この発想が重要だとしています。
理想的なシナリオは?
抑止の目的は戦争を防ぎ、命を失わないこと。冷戦(米ソ)のように長い軍拡が続いても「何も起きなかった」のが良い例だとされます。理想は、優れた技術と産業力を築いてもそれを防衛目的で使わずに済み、平和的な用途に転用されること。実際GPS・インターネット・エンジン・自動運転など、防衛(米国のDARPA等)から生まれ民間に普及した技術は多く、日本にも戦艦の光学系からカメラや新幹線につながった歴史があります。デュアルユース(軍民両用)が進めば、そうした世界に近づきます。
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中国も真似できない——日本が誇る「暗黙知」

フィジカルAIの時代に日本が強い理由が「暗黙知(process power)」です。ライニー氏は「信頼性の崖(reliability cliff)」という概念を挙げます——SNSでバズる「踊るロボット」と、工場で人と安全に、何年も壊れず働くロボットはまったくの別物。後者に必要な信頼性こそが本質です。

そして中国のロボットでさえ、その裏では日本製の部品——ハーモニックドライブやナブテスコといった、派手な動画には映らない企業——が使われています。中国は一部でキャッチアップしたが、すべてではない。差の源泉が「プロセスパワー=製造プロセスそのものの力」です。歯車が1つあっても、形や素材は分かってもリバースエンジニアリングは非常に難しい。いつ・どう熱を加えるか、どんな合金か、といった数十年かけて積み上げた工程の知恵は簡単に真似できない——ここに日本の強みがあります。

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「どうせ無理」——日本人の心理的なクセ

これだけ日本企業が関わり、日本のエンジニアのおかげでアンドゥリルがここまで来た面もある。ではなぜ日本からアンドゥリルが出てこなかったのか——ライニー氏は「正直すごく悔しい」と言います。

仮説は2つ。1つは防衛がそもそもセンシティブだったこと。もう1つが心理です。米国最大の強みは「ロジックのない楽観(根拠のない楽観)」=とりあえずできるでしょ、という姿勢。逆に日本最大の弱みは「ロジックのない悲観」=実はできる(もしかすると技術的には米国以上)のに、すごく悲観的だという指摘です。「無理だと思ったら、もう無理」。初代iPodの美しい筐体づくりで新潟・燕の工場が見つけ出されたように、日本にあるのに、日本人より先にアメリカ人が見つけることが起きています(今回もアンドゥリルの取引先に秋田の小さなモーターメーカーが入っていた)。

期待するのは、アンドゥリルが日本に工場を作り優秀な日本人エンジニアを採用することで、そのスピード感と米国流の楽観に影響され、5年後10年後に「私たちもできるじゃん」という空気が生まれること。そうなれば防衛に限らずハードテックで多くの会社が出てくる——その時コーラルは全力でバックアップしたい、と語ります。

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AI時代のメイド・イン・ジャパン——逆転のカギはハード

主役はハード → ソフト → そしてまたハード(フィジカルAI)へ
リアル/ハード
の時代
ソフトウェア全盛
(GAFAM・この20〜30年)
フィジカルAI
(ハード×ソフト)
日本の
逆転チャンス

正直、純ソフトウェアの世界で日本からネクスト・ソニーやトヨタが出るとは考えにくい(言語・文化の壁、マーケ・セールスの比重が大きい)。しかしロボットを実際に作れる「フィジカルAI」の時代には、半導体のサプライチェーンを含め日本のハードの強みが生きる。テスラ・スペースX・Appleが示すように主役は「ハード→ソフト→またハード」と巡り、ハードとソフトが組み合わさると強いプロダクトになる。ここに日本の逆転の芽がある、という見立てです。

その象徴が京都フュージョニアリング(核融合)。コーラルは創業初期(2019年設立)から出資しており、まず「ツルハシを売る」=部品を提供し、2030年代に発電が現実になればリアクター全体・サプライチェーンを押さえていく戦略です。日本は原子力にも製造業にも強く、掛け算で部品を提供するモデルは合理的で、ノウハウが蓄積すれば自分たちで作れる、と。90年代に中韓が政府支援(助成金)で製造基盤を作ったのに対し、日本企業が撤退したのは合理的な判断でしたが、最近は日本政府も助成金でギアを変え、ハードウェア界が盛り上がる期待があります。

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世界で売れる日本企業の条件

「It works」で売れる

ソフトは言語・文化の壁でマーケ・セールスが必須。だがハードは、ものが機能しスペックで証明できれば、積極的に売り込まなくても世界で通用する。ここは日本人(東アジア)が強い。

最初からグローバル前提

数千億円級の会社にするには市場を国内に閉じない。「グローバル企業を作るぞ」と覚悟し、英語を話せるメンバーを集め、社内言語や組織の作りをそのニーズに合わせて設計する。

目線を上げる・AIが壁を下げる

大企業の売上はすでに大半が海外。スタートアップは目線を上げないと厳しい。ただしAI時代は言語の壁が急速に消え、グローバル化の難易度は下がっている。

アメリカでは今「ジャパンラブ」が高まり、防衛に限らずフィジカルAI・航空機エンジンなど幅広い米スタートアップから「日本のこういう相手に会いたい」という連絡が殺到しているといいます。日本を製造基盤にしたい狙いが多い一方、「部品提供にとどまるのか、全体を指揮する存在になれるのか」は今後の問い。ライニー氏は「製造基盤は基盤。そこからいずれ自分たちで作れる(中韓もそうだった)。まずはそこを押さえるべき」と締めくくります。

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用語ミニ辞典

アンドゥリル(Anduril)米国の防衛テック企業。Oculus創業者パルマー・ラッキーらが創業。ソフト重視・自社でR&Dリスクを取るモデルで、防衛スタートアップの新巨頭。名は指輪物語に由来。
bits と atomsビット(ソフトウェア)とアトム(ハードウェア・製造)の対比。米国はbitsで先行、atoms(製造)を手放してきた。日本の強みはatoms側にある。
フィジカルAIソフトのAIが現実世界のハード(ロボット等)と結びついた領域。ロボットを実際に作れる製造力が問われ、日本のハードの強みが生きるとされる。
暗黙知/プロセスパワー数十年かけて積み上げた製造工程の知恵。図面や形が分かってもリバースエンジニアリングが困難で、中国も簡単に真似できない日本の競争力の源泉。
信頼性の崖(reliability cliff)短時間バズる「踊るロボット」と、工場で何年も安全・確実に働くロボットの間にある大きな差。後者に必要な信頼性が本質。
抑止力/ポーキュパイン戦略攻められないほど強く見せ、攻撃を思いとどまらせる考え方(ヤマアラシ戦略)。目的は戦争を防ぎ命を守ること。
デュアルユース(軍民両用)防衛から生まれた技術が民間にも使われること。GPS・インターネット・エンジンなどが例。理想は技術が平和的用途に転用されること。
京都フュージョニアリング核融合のスタートアップ。コーラルが創業初期(2019年設立)から出資。まず部品(ツルハシ)を提供し、2030年代の発電実現時にサプライチェーンを押さえる戦略。