社内共有資料|ニュース解説

ハイブランドも戦略を変えてきた
バレンシアガが広告ではなく「個人のメルマガ」に投資する理由

買い物や調べものの相談相手が、Google検索からChatGPTなどのAIへ移り始めています。高級ファッションブランドのバレンシアガが打った新しい一手と、その裏にある「GEO(生成AI最適化)」という考え方を、数字と事例でわかりやすく整理します。
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まず3行まとめ

02

何が起きた?——バレンシアガ、個人メルマガのスポンサーに

Substack(サブスタック)とは

個人の書き手(ジャーナリスト・専門家・エッセイストなど)が、自分のメルマガ(ニュースレター)を発行して読者から直接購読料をもらえる海外サービス。「信頼できる個人の文章」が集まる場所として、海外で存在感を増しています。

2026年6月、Substackはブランドが公式に書き手のスポンサーになれる制度「ネイティブスポンサー」プログラムを発表しました。その第1弾として名を連ねたのがバレンシアガです。参加したのは次の7社。ファッション以外の業界も並んでいるのがポイントで、これは一業界の流行ではなく、業界を横断した動きです。

バレンシアガYahoo ScoutWhatnotGranolaT-MobilePolymarketUber

やっていることの本質

バレンシアガがやっているのは、自社の広告を出すことではありません。独立した書き手が書く「信頼される文章」の中に、ブランドの名前と背景情報を自然なかたちで登場させることです。自社でメルマガを出すのではなく、「他人が自分について書いてくれる」状態を作る——ここがこれまでの広告と決定的に違います。

2026年6月15日
Substackが「ネイティブスポンサー」プログラムを発表。第1弾7社にバレンシアガが参加
※ 発表日・参加社は元記事および海外メディア(Complex・Luxury Dailyなど)の報道による
2026年6月24日
世界最大の広告祭カンヌライオンズの会期中に、バレンシアガとSubstackがカンヌの旗艦店でトークイベントを共催
司会は元Elle UK編集長でSubstack国際部門責任者のFarrah Storr氏。作家のPlum Sykes氏・Pauline Klein氏が登壇
現在
「広告を買う」から「信頼される書き手に語ってもらう」へ——マーケティング投資の置き場所が動き始めている

※ バレンシアガが広告を完全にやめたわけではありません。「広告一辺倒だった投資先に、個人の書き手という新しい選択肢が加わった」というのが正確なところです。

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背景:調べものの主役が、Google検索からAIに代わり始めた

なぜ高級ブランドがそんな回り道のような投資をするのか。背景には、「検索する」という行動そのものの変化があります。ユーザーは「検索して、並んだリンクを見比べて、サイトを開く」のをやめ始め、「AIに聞いて、返ってきた1つの答えで決める」ようになってきました。元記事が海外の調査データからまとめた数字を見てください。

9億人
ChatGPTを毎週使う人
2026年2月時点の推計。1年前(約4億人)から2倍以上に増えた
68%
検索の「ゼロクリック」率
2026年1〜4月のGoogle検索のうち、どのサイトも開かれずに終わった割合
93%
AIとの対話で完結する割合
GoogleのAI検索モードでの実測。AIに質問した人のほとんどは、リンク先のサイトを開かずに答えだけ受け取って終わる
9.9
AI経由でサイトに来る人
生成AIの答えからサイトを訪れた人の数は、2024年11月→2026年5月で約9.9倍に
15.9%
ChatGPT経由の人が買う割合
従来の検索経由は1.76%。AIが「あなたに合うのはこれ」と名指しした状態で来るので、すでに買う気で来る
1つの答え
新しい「店頭」
昔の店頭は棚、次はGoogleの1ページ目、いまは「AIが返す数行の推薦文」。そこに名前が入るかどうかが勝負に

※ いずれも元記事が引用する海外調査(Similarweb・SparkToroなど)の公表値。調査ごとに集計方法が異なるため、正確な1つの値というより「傾向」として読んでください。

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直撃を受けた側:検索で勝ってきた大手サイトの流入減

この変化は、検索対策(SEO)に時間とお金を積み上げてきた企業を直撃しています。元記事が挙げる「崩れ始めた側」の数字です。検索結果の上部にAIの要約が表示されるようになり、サイトまで来てもらえなくなったのが主な原因とされています。

検索からの訪問者はどれだけ減ったか(元記事より)
HubSpot米国のマーケティング支援大手
−70〜80%
Healthline米国の医療情報サイト
約−50%
CNN米国のニュースメディア
−27〜38%
HubSpotは2024年11月から2025年にかけての減少幅。同社トップも「検索のAI要約が先に答えを出すので、サイトまで来る人が減った」と認めています。
AI要約が表示されるだけで、クリックは約3分の1に
AI要約が出ない検索従来どおりの検索結果
1.62%
AI要約が出る検索結果の上部にAIの答えが表示
0.61%
検索結果がクリックされる割合の比較。AIが上に答えを置くだけで、リンクを開く人は3分の1近くまで減ります。「10年かけて積んだ検索資産が溶け始めている」——これが元記事の言う2026年の出発点です。
05

「検索で1位」でも、AIには引用されない——実は別のゲーム

ここで多くの人が誤解しがちなのが、「検索で上位を取れていれば、AIも自社を紹介してくれるはず」という思い込みです。元記事によると、これはもう成り立ちません。

Google検索の上位10件と、AIが引用するページの「重なり」
2025年半ば
75%
2026年初頭
17〜38%
1年足らずで重なりが崩壊。さらに、ChatGPTがよく引用するページの28.3%は、Google検索では圏外(検索ではほぼ見えないのにAIには選ばれている)というデータもあります。

つまり、「検索の順位」と「AIに引用されるか」は、すでに別々のゲームになっています。検索対策の延長線上でがんばっても、AIの答えの中には入れない。では、AIに選ばれる側は何をしているのか——それが次の「GEO」です。

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新しい考え方「GEO」——検索対策のAI版

GEO(ジーイーオー)とは

Generative Engine Optimization=生成AI最適化。ChatGPT・Gemini・ClaudeなどのAIが「答え」を作るとき、自社の名前を正しく挙げて(引用して)もらうための工夫のこと。「Googleで上位に表示させる工夫」がSEOなら、GEOはそのAI版です。

GEOで大事なのは、テクニックの前に考え方の切り替えです。元記事は「SEO脳からGEO脳へ」として、次の対比を挙げています。

これまで(SEO脳)
検索される側になる発想
  • 検索キーワードで上位を取る
  • 自社サイトに人を集める
  • 自社で発信する(広告・自社メディア)
  • クリック数・アクセス数を追う
  • 「上質」「こだわり」などの宣伝文句
これから(GEO脳)
AIに引用される側になる発想
  • AIに正確に名前を挙げてもらう
  • ユーザーがサイトに来る前の「AIの答え」の中に入る
  • 第三者に語ってもらう(他人の記事・メルマガに載る)
  • AIに自社を聞いたとき出てくるかを追う
  • 確認できる固有名詞と数字で語る
07

バレンシアガの狙い:AIが見ているのは「他人があなたを語った量」

「第三者に語ってもらう」が効くのは、感覚論ではありません。検索分析の大手Ahrefs(エイチレフス)が2025年12月に発表した調査によると、あるブランドがAIの回答に登場するかどうかを最も強く左右していたのは、「他人が、そのブランドの管理していない場所で、そのブランドについて書いた回数」でした。元記事はこれを「ブランド言及(branded mentions)」と呼びます。リンクの数でも、サイトの評価でも、記事の量でもなかった——というのがこの調査のポイントです。

バレンシアガのSubstack投資は、まさにこの「他人に書かれる回数」を意図的に増やす動きです。信頼される書き手の文章に自然に登場することが、AIの答えの「参考文献」に入ることにつながる、という読みです。

引用される側になると、何が起きるか

検索のAI要約に引用されたブランドは、検索からのクリックが35%増・広告のクリックが91%増になったという調査もあります。さらにセクション03で見たとおり、AI経由で来る人は最初から買う気で来るため、購入・申込に至る割合が桁違いに高い。引用される側と、されない側の差は開く一方です。

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AIに引用される文章の「5つの型」

では具体的に何をすればいいのか。元記事はデータの裏付けがある型を5つ挙げています。どれも大がかりな話ではなく、今ある文章の書き方を変えることから始められます。

統計・数字・出典を入れる

「効果的です」ではなく「◯◯%改善した」。数字や出典つきの文章は、AIの回答に登場する割合が高い。

統計入りの記事はAI回答での露出が30〜40%高い(元記事より)
第三者に書いてもらう

自社の宣伝より、信頼される書き手(専門メルマガ・note・業界メディア)に事実ベースで語ってもらう。これが「ブランド言及」を増やす本丸。バレンシアガがやったのはこれ。

新しさを保つ

情報を放置せず更新し続ける。古い情報のままのページは、AIに選ばれにくくなる。

公開・更新から2か月以内のページは引用が28%多い(元記事より)
固有名詞と事実の表記をそろえる

ブランド名・商品名・素材・数値を、プレスリリース・記事・商品ページで同じ表記に統一する。AIが「同じものの話だ」と拾いやすくなる。

AIで自己診断する

ChatGPTやClaudeに自社ブランドのことを聞いてみる。出てこない・間違って説明される部分が、そのまま伸びしろの地図になる。

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業種別:訴求文はこう変わる(Before → After)

元記事が挙げる書き換え例です。共通するコツは、形容詞(上質・こだわり・豊富)を、確認できる事実(産地・時間・件数・割合)に置き換えること。AIは「格上げ」という言葉は引用できませんが、「産地・時間・出荷数」は引用できます。

アパレル・コスメの通販
BEFORE上質な素材で、あなたを格上げする
AFTER台湾の職人が縫う。1着に◯時間。累計◯万着出荷、返品率◯%
なぜ効くか:AIは「格上げ」を引用できないが、産地・時間・出荷数・返品率は根拠として引用できる。
飲食・カフェ
BEFOREこだわりの一杯をあなたに
AFTER豆は◯◯農園の単一産地。焙煎から48時間以内に提供。◯◯(第三者メディア)掲載
なぜ効くか:AIに「近くの本格コーヒー」と聞かれたときに拾われる固有名詞を、あらかじめ仕込める。
コンサル・士業などの高単価サービス
BEFORE豊富な実績であなたの課題を解決
AFTER◯業界◯社を支援、平均◯%改善。手法は◯◯(外部媒体で解説記事化)
なぜ効くか:外部に解説記事があること自体が「ブランド言及」になり、AIの推薦候補に入りやすくなる。
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自社チェック:「検索頼み」になっていないか5問診断

元記事の診断チェックです。自社(またはお客様の会社)に当てはまるものにチェックを入れてみてください。3つ以上当てはまるなら、GEOに取り組む優先度を上げるサインとされています。

チェックを入れると診断が表示されます
当てはまる項目を選んでください。

今日やる1アクション

元記事のすすめはシンプルです。ChatGPTかClaudeに「◯◯(自社名・商品名)ってどう?」と聞いてみる。出てこない、あるいは間違って説明されるなら、そこが最初に手を打つべき場所です。実際、AI検索への対策を「予定している」企業は92%いるのに、「実際にやっている」のは40.6%。この差がまだ先行者になれる空白だと元記事は指摘します。

日本で真似するときの注意:ステマ規制

「お金を払って書いてもらう」を日本でやる場合は、2023年10月に始まったステマ規制(景品表示法)で、金銭が絡む記事には「PR」「提供」などの明示が必須です。隠すと、AI対策の前にブランドの信頼そのものを傷つけます。バレンシアガの例も、Substackの「公式スポンサー制度」という透明なかたちで行われている点が重要です。

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よくある疑問

もう検索対策(SEO)はやらなくていい?
いいえ。検索がなくなるわけではなく、今も多くの人はGoogleを使っています。危ないのは「検索順位だけ」を追い続けることです。セクション05のとおり、検索の順位とAIの引用は別のゲームになったので、両方を見る必要がある——というのが元記事の主張です。
大企業やハイブランドの話で、中小企業には関係ないのでは?
むしろ逆です。AIに「近くの◯◯でおすすめは?」と聞く人が増えるほど、AIが拾える固有名詞と事実を書いてある会社が選ばれやすくなります。セクション09の飲食店の例のように、書き方の工夫だけならお金をかけずに今日から始められます。
まず何から手をつければいい?
順番は3つ。①ChatGPTやClaudeに自社を聞いて、出てこない・間違っている点を洗い出す。②自社サイトや紹介文の「形容詞」を「数字と固有名詞」に書き換える。③第三者(業界メディア・専門メルマガ・note等)に書いてもらう機会を作る。①は5分でできます。
この記事の数字はどこまで信用していい?
元記事(note・Hiroto氏)が海外の調査会社やメディアの公表値をまとめたものです。調査ごとに集計方法・期間・対象が異なるため、1つ1つの数値の正確さより「方向性」を読むのが安全です。個別の数値の出典は記事末尾のリンクから確認できます。
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用語ミニ辞典

GEO(生成AI最適化)Generative Engine Optimizationの略。ChatGPTなどのAIが答えを作るとき、自社の名前を正しく挙げてもらうための工夫。検索対策(SEO)のAI版。
SEO(検索エンジン最適化)Googleなどで検索されたとき、自社のページを上位に表示させるための工夫。これまでのWeb集客の中心だった。
ゼロクリック検索したのに、どのサイトも開かずに終わること。検索結果の画面やAIの要約だけで用が済んでしまう状態。
Substack(サブスタック)個人が有料メルマガ(ニュースレター)を発行して、読者から直接購読料をもらえる海外サービス。2026年6月にブランドが書き手のスポンサーになれる公式制度を開始した。
ブランド言及(branded mentions)自社が管理していない場所(他人の記事・メルマガ・SNSなど)で、他人が自社について書いた回数。AIの回答に登場するかどうかを最も左右する要素とされる。
AI要約(AIによる概要)Googleの検索結果の上部に表示される、AIが作った答えのまとめ。英語ではAI Overviews。これが表示されるとリンクのクリックが大きく減る。
購入・申込に至る割合サイトに来た人のうち、実際に購入や申込までした人の割合(コンバージョン率)。AI経由の訪問者はこの割合が桁違いに高い。
ステマ規制広告であることを隠した宣伝(ステルスマーケティング)を禁じる日本のルール。2023年10月から景品表示法で規制され、お金が絡む記事には「PR」「提供」の明示が必要。