個人の書き手(ジャーナリスト・専門家・エッセイストなど)が、自分のメルマガ(ニュースレター)を発行して読者から直接購読料をもらえる海外サービス。「信頼できる個人の文章」が集まる場所として、海外で存在感を増しています。
2026年6月、Substackはブランドが公式に書き手のスポンサーになれる制度「ネイティブスポンサー」プログラムを発表しました。その第1弾として名を連ねたのがバレンシアガです。参加したのは次の7社。ファッション以外の業界も並んでいるのがポイントで、これは一業界の流行ではなく、業界を横断した動きです。
バレンシアガがやっているのは、自社の広告を出すことではありません。独立した書き手が書く「信頼される文章」の中に、ブランドの名前と背景情報を自然なかたちで登場させることです。自社でメルマガを出すのではなく、「他人が自分について書いてくれる」状態を作る——ここがこれまでの広告と決定的に違います。
※ バレンシアガが広告を完全にやめたわけではありません。「広告一辺倒だった投資先に、個人の書き手という新しい選択肢が加わった」というのが正確なところです。
なぜ高級ブランドがそんな回り道のような投資をするのか。背景には、「検索する」という行動そのものの変化があります。ユーザーは「検索して、並んだリンクを見比べて、サイトを開く」のをやめ始め、「AIに聞いて、返ってきた1つの答えで決める」ようになってきました。元記事が海外の調査データからまとめた数字を見てください。
※ いずれも元記事が引用する海外調査(Similarweb・SparkToroなど)の公表値。調査ごとに集計方法が異なるため、正確な1つの値というより「傾向」として読んでください。
この変化は、検索対策(SEO)に時間とお金を積み上げてきた企業を直撃しています。元記事が挙げる「崩れ始めた側」の数字です。検索結果の上部にAIの要約が表示されるようになり、サイトまで来てもらえなくなったのが主な原因とされています。
ここで多くの人が誤解しがちなのが、「検索で上位を取れていれば、AIも自社を紹介してくれるはず」という思い込みです。元記事によると、これはもう成り立ちません。
つまり、「検索の順位」と「AIに引用されるか」は、すでに別々のゲームになっています。検索対策の延長線上でがんばっても、AIの答えの中には入れない。では、AIに選ばれる側は何をしているのか——それが次の「GEO」です。
Generative Engine Optimization=生成AI最適化。ChatGPT・Gemini・ClaudeなどのAIが「答え」を作るとき、自社の名前を正しく挙げて(引用して)もらうための工夫のこと。「Googleで上位に表示させる工夫」がSEOなら、GEOはそのAI版です。
GEOで大事なのは、テクニックの前に考え方の切り替えです。元記事は「SEO脳からGEO脳へ」として、次の対比を挙げています。
「第三者に語ってもらう」が効くのは、感覚論ではありません。検索分析の大手Ahrefs(エイチレフス)が2025年12月に発表した調査によると、あるブランドがAIの回答に登場するかどうかを最も強く左右していたのは、「他人が、そのブランドの管理していない場所で、そのブランドについて書いた回数」でした。元記事はこれを「ブランド言及(branded mentions)」と呼びます。リンクの数でも、サイトの評価でも、記事の量でもなかった——というのがこの調査のポイントです。
バレンシアガのSubstack投資は、まさにこの「他人に書かれる回数」を意図的に増やす動きです。信頼される書き手の文章に自然に登場することが、AIの答えの「参考文献」に入ることにつながる、という読みです。
検索のAI要約に引用されたブランドは、検索からのクリックが35%増・広告のクリックが91%増になったという調査もあります。さらにセクション03で見たとおり、AI経由で来る人は最初から買う気で来るため、購入・申込に至る割合が桁違いに高い。引用される側と、されない側の差は開く一方です。
では具体的に何をすればいいのか。元記事はデータの裏付けがある型を5つ挙げています。どれも大がかりな話ではなく、今ある文章の書き方を変えることから始められます。
「効果的です」ではなく「◯◯%改善した」。数字や出典つきの文章は、AIの回答に登場する割合が高い。
統計入りの記事はAI回答での露出が30〜40%高い(元記事より)自社の宣伝より、信頼される書き手(専門メルマガ・note・業界メディア)に事実ベースで語ってもらう。これが「ブランド言及」を増やす本丸。バレンシアガがやったのはこれ。
情報を放置せず更新し続ける。古い情報のままのページは、AIに選ばれにくくなる。
公開・更新から2か月以内のページは引用が28%多い(元記事より)ブランド名・商品名・素材・数値を、プレスリリース・記事・商品ページで同じ表記に統一する。AIが「同じものの話だ」と拾いやすくなる。
ChatGPTやClaudeに自社ブランドのことを聞いてみる。出てこない・間違って説明される部分が、そのまま伸びしろの地図になる。
元記事が挙げる書き換え例です。共通するコツは、形容詞(上質・こだわり・豊富)を、確認できる事実(産地・時間・件数・割合)に置き換えること。AIは「格上げ」という言葉は引用できませんが、「産地・時間・出荷数」は引用できます。
元記事の診断チェックです。自社(またはお客様の会社)に当てはまるものにチェックを入れてみてください。3つ以上当てはまるなら、GEOに取り組む優先度を上げるサインとされています。
元記事のすすめはシンプルです。ChatGPTかClaudeに「◯◯(自社名・商品名)ってどう?」と聞いてみる。出てこない、あるいは間違って説明されるなら、そこが最初に手を打つべき場所です。実際、AI検索への対策を「予定している」企業は92%いるのに、「実際にやっている」のは40.6%。この差がまだ先行者になれる空白だと元記事は指摘します。
「お金を払って書いてもらう」を日本でやる場合は、2023年10月に始まったステマ規制(景品表示法)で、金銭が絡む記事には「PR」「提供」などの明示が必須です。隠すと、AI対策の前にブランドの信頼そのものを傷つけます。バレンシアガの例も、Substackの「公式スポンサー制度」という透明なかたちで行われている点が重要です。