社内共有資料

AIネイティブ時代の生存戦略
地頭はAIに食われる——残るのは「欲望する力」だ

Startup Aquarium 2026(Coral Capital主催)より、チームみらい党首 安野貴博氏 × PKSHA Technology 上野山勝也氏の対談をわかりやすく整理
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まず3行まとめ

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元動画(約44分)

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登場人物

ゲスト

上野山勝也氏(PKSHA Technology)

  • PKSHA Technology 代表取締役。AIの領域で13年
  • プロフェッショナルファームを経てAI・ソフトウェアの世界へ。東京大学松尾研究室の出身
  • 約9年前から「ソフトウェアのインターフェースは自然言語になる」と提唱し、エンタープライズ向けの対話AIエンジンで国内シェア1位
  • 本対談では「知的な運動神経」「アクション空間」「自分経営」などのキーワードを展開
ゲスト

安野貴博氏(チームみらい)

  • 政党チームみらい党首・参議院議員(2025年参院選・全国比例で初当選)。「スタートアップ政党」を掲げる
  • 東京大学松尾研究室の出身(上野山氏は研究室の先輩にあたる)
  • PKSHAグループでコンタクトセンター向けチャットボット事業のBEDOREを立ち上げ、その後リーガルテックのスタートアップを創業。SF作家としても活動
  • 都知事選出馬を経て政界へ。選挙期間中は自身の代わりに質問へ答え続けるAI「AIあんの」を24時間稼働させる「2馬力選挙」を実践

イベント:Startup Aquarium 2026(Coral Capital主催のスタートアップ・キャリアイベント)。モデレーターはCoral Capitalの澤山陽平氏(Founding Partner)が務めています。

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数字で見る「AIネイティブ時代」

2/100
社会がAIを使えている度合い
AIができることを100とすると、社会で使われているのは2くらい(上野山氏の体感)。残り98がチャンス=組み合わせのアービトラージが無限にある
150
ダンバー数(信頼関係の上限)
人間が信頼関係を保てる集団の上限は150〜200人とされるが、SNSで増え、AIでさらに増える。組織は「横に広いピラミッド」へ(安野氏)
2週間
試行錯誤1周のスピード
かつて1〜2年かかった「作って出してダメ出しを受けて直す」サイクルを、今の大学生は2週間ペースで回している

前提として、この変化は「ブームではなく、不可逆な確定した未来」(上野山氏)。情報革命は10年20年のマクロトレンドとしてAI革命へ進んでおり、このトレンドに抗ってはいけない——これが対談全体を貫く時代認識です。

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AIは「知る」から「実行する」へ(LLM→LAM)

これまで:LLM(物知りなAI)
テキストを入れると、テキストが返ってくる——知識を引き出すAI
テキストを
入力
AIが知識を
引き出し・加工
テキストが返る
(知る)

これから:LAM(アクションするAI)
テキストを入れると、AIが実際に動く——コードを書き、タスクをこなす
テキストで
依頼
コードを
書く
タスクを
こなす
ロボット・GUI
まで操作
現実世界に
アクション

上野山氏いわく、ソフトウェアは「コーディング→GUI→ブラウザ→スマホ→自然言語」と形を変えながら人間に近づいてきた。その到達点がLLMで、いまはLAM(Large Action Model)=テキストを入れるとアクションが出てくる世界への進化が起きています。安野氏も「Claude Codeが手放せない。1行1行書くのではなく、コンテキストを覚えてもらうために全部Claude Codeを介して作業する」とコンピューターの触り方自体が変わったと語り、CUIだけでなく人間が使うGUIをAIが触り始めた点(AnthropicのCoworkなど)を今年の注目ポイントに挙げます。

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地頭よりも「知的な運動神経」の時代に

「地頭がAIに食われる」とはどういうこと?
現象を観察し、構造化して理解する認知系の能力=いわゆる地頭は、誰もがAIでエンパワーできるようになり、差がつかなくなる(上野山氏)。コンサルの「空・雨・傘」やリクルートの「見立てる・仕立てる・動かす」で言えば、前半(分析・見立て)がAIに爆速で代替される。その分、出口側=アクションの価値が一気に上がります
「知的な運動神経」とは?
物知りなだけの人が世の中にインパクトを与えるわけではない。現実世界に介入し、アクションし、インパクトを出す実行能力のこと。「このアングルで攻めると業界が変わるのでは」と発想・構想し、実行する力。上野山氏は「実はAI以前から運動神経こそが重要だった。AIがそれを炙り出しただけ」と指摘します。
「アクション空間」って何?
自分がいま取れる行動の選択肢の広がりのこと。人はバイアスによって「自分にはこれとこれしかできない」と狭く見積もりがちだが、まともに考えると実はものすごい数のオプションがある。イベントに足を運ぶのも、隣の人に話しかけるのも、突然都知事選に出るのもアクション。すごい企業ほど「意味がわからない」アクションの取り方をしている——この空間を正しく認識することがキャリアの本質だと2人は意気投合します。

行動が学びに変わるサイクル(上野山氏の「学びの定義」)

1行動する

アクション空間から一手を選んで実行する。最初は怖いが、続けるとやらない方が気持ち悪くなる。

2情報が返る

行動すると世界から情報(反応・結果)が返ってくる。部屋にこもっていては何も返ってこない。

3体験になる

返ってきた情報が自分だけの体験=テキスト化されていない一次情報として蓄積される。

4学びになる

体験が学びに変わる。これが学びの定義であり、AIには代替されない資産になる。

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経験の賞味期限と「欲望する力」

AIは結局「もともと強い人」をさらに強くするだけでは?
安野氏の答えは「半分そうで、半分違う」。コードを書いてきた人の方がAIの出力をレビューする精度は高いが、コーディングエージェントが賢くなるにつれその状態は長く続かない。実際、コーディング経験ゼロの人がバイブコーディングだけで作ったプロダクトが顧客を獲得する事例も出ています。「経験があることがアドバンテージになる時代はあるが、意外と短い」。むしろ「これをやりたい」と欲望する力の方が大事で、方向さえ決まればAIが道を教えてくれます。
下積みで学んできたジュニアはどうなる?
上野山氏は「作業は自動化されるが、そもそも作業能力は未来から見ると『いらなかった能力』かもしれない」と喝破します。プロフェッショナルファームでトップになる人も作業能力で登ったわけではなく、B2Bの本質は「人間が人間を動かす」こと。安野氏は電卓とGoogleの例を挙げ、計算力や知識暗記の価値が下がったように論理的に考えること自体の経済価値も下がると指摘します。一方で経験は「スキップして、いま必要なものを高速に積める」——ジュニアかシニアかではなく、「いる能力か・いらない能力か」「いる経験を高速に積めるか」というメタ視点を持てる人が強い、というのが両氏の見立てです。
採用はどう変わった?(PKSHAの実例)
中途採用では「中途半端なホワイトカラー能力は瞬時に自動化されるから、もう見ない」。代わりに内発的動機・当事者意識といったプリミティブな部分を見ます。新卒は「自分が学生だった頃より明らかに優秀。AIでブーストされている」。優秀な人がなぜ優秀になったかを遡ると、20代で「これがやりたい」という熱を軸に行動して体験を獲得した人が多い——つまり内発的動機の価値はますます上がります。顧客の痛みや自分の原体験は、AIには代替されません。
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AI時代の組織——チームみらいの実践と「横に広いピラミッド」

チームみらい:政党を「情報処理パイプライン」として設計する

安野氏は、同じ仕事が100人→10人でできるなら最適なチームの人数から設計し直すべきで、少人数ほどコミュニケーションが密になり「脳が同期」しやすいと語ります。技術がエクスポネンシャルに進化する前提で「1年後の組織」を決めなければならない——人事・組織設計者には難しい時代です。

政党の機能を大きく捉えると「情報の加工」——市民の困りごとや有識者の声を聞き、法案・委員会質問・質問主意書に変換して国会やメディアに投げ込む。この一連の情報処理パイプラインは設計できる、という発想で党首自らClaude Codeを使い倒し、各所にAIを実装。自身を「国会にデプロイされたFDE(前線配備エンジニア)」と呼びます。ビジョンと実装の距離が縮まった今、現物を見せることが新しいリーダーシップ像になる、と。

コミュニケーションのトポロジーが変わる

安野氏は、AIでコミュニケーションのコストが下がることでダンバー数(信頼関係を保てる人数の上限)が広がり、組織のピラミッドが「横に広く」なると予想。上野山氏も、社内問い合わせを自動化するエージェントが「社内の集合知を人格化した存在」になり愛着を持たれ始めている実例を紹介し、1対1対Nの新しいコミュニケーション形態が立ち上がると語ります。選挙期間中の「AIあんの」も同じ発想で、有権者一人ひとりが聞きたいことを聞ける上、対話ログを解析すれば関心の集中点が本人に届く——ブロードリスニングの実践です。

「AIを通さない資料を読ませるのは失礼!?」

マネジメントの現場では「提案の前に一度AIに通して議論してから持ってきて」がすでに当たり前になりつつあります。コーディングで「なぜClaude Codeを挟まないの?」となったように、人間同士のコミュニケーションにもAIを挟むのが礼儀になるかもしれません。チームみらいでは、判断のプリンシプル(原則)を明文化したファイルを整備し、Claudeのスキルとして配布して外部発信や委員会質問が原則に沿っているかを発信前にチェック——マネージャーの仕事は「この範囲なら安心して動ける」というガードレール=ゲーム作りであり、その幅がAIでぐっと広がった、と安野氏は語ります。

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個人の生存戦略——テクノロジー×自分のwillにオールイン

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最後のメッセージ:あなたはすでに起業している

上野山氏より

「あなたはすでに起業している」

  • 社会人になった瞬間から、自分という有限のリソースをどこに配分し、どこを目指すかという「自分経営」は始まっている
  • 「自分は何がやりたいのか」「転職すべきか」という悩みは、起業後に投資家やメンバーから突きつけられる問いと構造がまったく同じ。いまの悩みは起業のトレーニングになっている
  • 1つの会社に骨を埋める前提が崩れた今、全員が「自分自身をどう経営するか」を突きつけられている。それを楽しみ、いろんな人と遭遇しにいこう
安野氏より

「あなたはすでに投資家でもある」

  • 就職とは、自分の労働価値をその会社に投資すること。どの会社に自分を投資するのか、投資家の目線で意思決定すべき
  • AIでエクスポネンシャルに世界が変わる時代は、良くも悪くもゲーム全体が変わる時代。スタートアップが果たせる社会的役割が非常に大きく、投資のアルファも大きい
  • 不確実性への耐性は「上げ得」——世界の不確実性は増しており、不確実性を取れることのリターンも上がっている
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用語ミニ辞典

Claude CodeAnthropicのコーディングエージェント。指示すると自らコードを書き、作業を進める。安野氏は「手放せない。全作業をこれ経由にした」と語り、対談全体のキーツールとして登場。
LAM(Large Action Model)テキストを入れるとテキストが返るLLM(大規模言語モデル)に対し、アクション(コード生成・タスク実行・機器操作)が返るモデルを指す上野山氏の表現。「知るAI」から「実行するAI」へ。
FDE(Forward Deployed Engineer)顧客や現場の最前線に配備されるエンジニア。コード作成が楽になった分、現場でドメイン知識を吸収し課題を見つける価値が高騰。安野氏は自身を「国会にデプロイされたFDE」と表現。
バイブコーディング自然言語の指示だけでAIにコードを書かせる開発スタイル。コーディング経験ゼロの人が作ったプロダクトが顧客を獲得する事例も出ている。
アクション空間いま自分が取れる行動の選択肢の広がり。バイアスで狭く見積もられがちだが実は広大。これを正しく認識し広げることがキャリアの本質、というのが本対談の中心概念。
ダンバー数人間が安定した信頼関係を保てる集団サイズの上限(約150人。研究上は100〜250人の幅)とされる人類学の概念。SNSとAIによってこの上限が広がり、組織形態が変わるという文脈で登場。
ブロードリスニング多数の声をAIで聞き取り・解析して意思決定に活かす手法。「AIあんの」の対話ログ解析のように、AIが大勢と交わした対話を集約して人間側に還流させる。
空・雨・傘「空を見る(事実)→雨が降りそう(解釈)→傘を持つ(行動)」という思考フレーム。前半の分析パートはAIが爆速で代替するため、行動パートの価値が相対的に上がる。